2014.07.04
~ある介護施設経営者が語る、介護の現状~ <4/4>
株式会社INKサポートでは、介護施設を経営し、自らも介護スタッフとして働いているI氏に、介護現場のレポートをお願いいたしました。介護施設の職員が直面する老人介護の実態、介護業界における構造的な問題などが、現場からの視点で直截に語られています。
レポートは、「介護の現実~ある介護施設経営者が語る、介護の現状~」と題し、4回に分けて掲載しております。
介護現場の実情がわかるレポートとなっております。ご一読下さい。
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「介護の現実」~ある介護施設経営者が語る、介護の現状~ <4/4>
『この様な状況の中でも、職員はプロ意識を持って介護を行っているが、認知症の利用者さんなどは、仕方のない事ではあるのだが、排尿、排便のコントロールが上手く出来ず、オシッコをかけられたり、時には排便を投げつけてきたりする事もあり、また暴力的な利用者も少なくはなく、優しく介護を行っていても噛みついて来たり殴ってきたりと身体のあちらこちらに傷があるのが今の介護職員であり、精神的にもかなり苦痛を伴うのが介護施設の現実だ。
そんな介護施設の現実を知らない介護家族は、高額なお金を払っているのだからやるのは当然だと思っているし、介護家族の要望がエスカレートしていくと施設長など施設を代表する者がピリピリとして来る。
そして、その矛先が職員に向けられる事により、どこの施設でも職員がすぐに辞めてしまう傾向にあり、介護職員の入れ替わりも激しくなってくる。
施設側も、このような状況の中で介護職員を確保するのが非常に難しくなってきており、費用をかけて人材募集を行っても、1名面接に来れば良い方であり、面接を行うと、採用するには不安が残る人材であったとしても、施設側としては採用しなければ施設が運営出来ないので採用する。
その結果、介護現場の質がますます低下していき、施設によっては人間関係が崩れてしまい施設内が暗く覇気のない施設になってしまっているところもあるようだ。
今後も高齢者増加に伴い新しい施設が次々と増えていく。
しかし、景気が回復し、働き口が増えていけば、介護職離れが益々増加し介護職員の確保が出来ず開所出来ない施設も出て来る事が予想されるし、新たな介護施設が今よりも更に厳しい状態になる可能性が高いのである。
また、超高齢化社会に向けて、介護や医療費の増加により、国民の更なる負担が避けられない状態にあり、国民負担増により介護を受けたくても、金銭的な問題から路頭に迷う要介護者や介護家族が増加するのではなかろうか。
このような現状を打開するにはそれぞれの施設単位ではどうする事も出来ない事を、国は本当に分かっているのか疑問である。
超高齢化社会に向かって突き進む日本で、いま我々介護施設側として出来る事は、要介護者に対して質の高い介護と安価な介護料金設定、そして介護職員に対する高い報酬をどの様な形で実現していくのかを課題に、常日頃から打開策を模索して行く事が求められる。
介護職員もプロ意識を持ち、目の前にいる要介護者に今何をしてあげられるのかを考えると共に、要介護者の方から大切なお金を頂いて仕事をしている以上、精一杯のお世話をさせて頂くしかない。
最後になるが、未来を切り開いて行く為にはもっと施設側も介護職員も介護家族もしっかりと団結して考えていかなければ道はないと思う。そして全体的な動きの中で、関連する施設建設に携わる方々の建築コストへの取り組みを積極的に推し進めて頂く事と、全体の内容を把握されて真剣に取り組んでいる方々のサポートが必要不可欠ではなかろうか。』
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以上、レポートにご協力頂きましたI様、どうもありがとうございました。